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東雲の旅

管理人の徒然日記  ~日常のアレコレから制作裏話まで~

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サブマス1

 ピクシブ怖ぇ…。いや何の話かってサブマスの話なんですけれどもね。えっいきなりなんでポケモン?って思われた方もおられるやもしれません、だってわたくし最近びーたさんを購入いたしまして(命名:シャム)、評価が高いことで有名なグラビティデイズで重力操りまくってましたからね、ヘタクソなりに。同時に購入したスパロボZ 破界編との同時攻略ですからね、だいたい任天堂ハードわたしゲームボーイのカラー以来持ってませんからね! なのになぜか、なぜかっていうかもう原因はピクシブですよ…。情報があまりないおかげで、女子の妄想が妄想をよんでなんかもう素晴らしいことになってませんかあの人たち。ほんとなんなんだあの双子素敵すぎる。成人男性双子、スーツにネクタイにコートに駅員帽、丁寧過ぎるくらいお堅い口調の兄と若干言葉がカタコトの弟とかもう…ッ、惚れてまうやろーー!まうやろーーやろーーー!(エコー) サブ主♀、ノボ主♀、クダ主♀のタグうますぎてPC前から離れられません。成人男性(20代後半~ぐらいだと特にいいなと思う)と主人公のトウコちゃん(14歳)とか、匂い立つ犯罪臭からしてご飯何杯もいけそうですジュルリ。だってノボリさん性的すぎるんですよー、なんなんですかあの人あの露出度のなさのくせに、スーツにコートっていう割かし二次元では使い古された萌え要素積んでるだけなのにもうあの滲みだすエロス。MMDで垂れ流される色気にうっかり口からハイドロポンプ出ましたよわたくし。…ああ…、ノボリさんに「や、やめてくださいましっ」って言わせてェ…。でもぷっつんしたノボリさんに「あんまり大人をからかうのは、おやめくださいまし」って言われてもみたい。つまり何が言いたいかっていうとノボリさんまじ性的。ずっと見てるとあの特徴的なもみあげとか全然気にならなくなるから不思議だよね!初めて見たときは「なんでこのひとこめかみに矢印刺さってんの?」って思ったのに。
 散々ノボリさんまじ性的性的ハスハス言いまくりましたが、クダリさんも大好きですクダリさんまじ天使。白のスラックスとか脚から腰にかけてのラインえろすぎるんですよ。子どもっぽい無垢な残酷さを持ち合わせているリアル小悪魔だといいなと、いう妄想がとまりません。が、今回はノボリさんしか登場しなかったのでノボリさん中心に性的性的言ってみました。内容は全然性的じゃありません。わたしがノボリさんにお疲れ様でしたって言われたいと思った結果がこれだよ! 本当はもっとノボリさんにましまし言ってほしかったんですが、いざ書いてみると使い方が難しいですね…無理やりねじ込んでも違和感のこるだけですし。もっと喋らせたかったなあという反省を残しつつ、折りたたみでサブマス、ノボリさん小話です。

○拍手レス○
3月25日 1:50 「トロイメライ」最高です~」 のあなたへ
>> 拍手ありがとうございますー!おっさん連載トロイメライ、お楽しみいただけたようでなによりです。甘やかしてあげたい気持ち、よくわかります…!これまで大変だったおっさんがTOVゲーム終了後どうして生きていくのか、掘り下げてみたいと思ったのが始まりのトロイメライです。のろのろ運転で申し訳ありませんが、のんびりとお付き合いくだされば幸いです。 //

3月26日 2:30 「楽しくよませていただきました~」 のあなたへ
>> 拍手ありがとうございます!レイヴン連載、楽しんでいただけたようで嬉しいです。そんなふうにおっしゃっていただけると、好き勝手におっさんのゲーム終了後を書きなぐっている身としてはによによが止まりません…!この先彼ら、というよりは彼になにが待ち受けていて、それがどう影響するのか、見守っていただければ幸いです。のろのろ運転のきまぐれ更新で大変申し訳ありませんが、今後もどうぞよろしくお願いいたします。 //

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最遊記パラレル 2

 初恋は、土井先生でした。大好きだったなあ、土井先生…いや今でも全然好きですけど。何歳ぐらいだったかは全然覚えてないんですが、夕方6時50分から10分間忍たまがあって、そのあと天才てれびくんを見るのが一連の流れでした。その天てれ見ながら「あれ?土井先生の声がする!」って思ったのが、私が初めて 声優 という方たちを意識したときだったと記憶しています。…何歳くらいだったかなー、小学校低学年? もちろんそのときは純粋にはしゃいでたわけですが、その事実を最近ふと思い出して驚愕しました。今も昔も変わってねぇ、っつーか目覚めんのはえぇなオイ。
 そんなわけで、とある大好きな最遊記サイトをひっさしぶりにいちから全部読み返したら巻き起こったこの最遊記ブームで、わたくしようやく電王見ました。当時は朝起きられなかった上に録画機器もなかったですし、知ってはいたもののなんとなくスルーしてたんですが、まあ初恋が土井先生で画集買いあさるほどガチはまりしてたのが三蔵である私が、電王にはまらないわけないですよね。てかもう普通に面白かったです。最後の方泣きながら見てましたし、「俺、参上!」ってやるときはテレビの前で一緒になってポーズ決めてましたから、ええ。一人で。いつか私に子どもが生まれたら、きっと電王のDVD買いそろえて、子どもと一緒に見るって決めてるんだ…!
 そんなこんなで、今また最遊記に帰ってきました。なんだこのブーメラン。いえ、前回の記事にのっけたやつの続きは、あれ書き終わってすぐくらいからぽちぽち書いてたんですが、「エロい三蔵」を目標に掲げたら、その手前で目標にビビって逃げたんですよねあっはっは。違うんだ…うっかり三蔵のキャラソンとか聞いちゃって、あまりのエロさにひゃああああ!ってなって、書こうとしたんだけど私にできるのか!?私に三蔵のエロさを表現できるのか…!?ってなって、逃げたんだ…! しかし先日、三蔵はあんだけエロいけれどもあいつどーてーだよね?っていう独り言を呟いてたら、フォロワーさんから反応を戴き、かつ前回のプロトタイプ最遊記もだいぶエロどーてー(犯罪者)でしたよって言っていただけたので、調子に乗って頭にあったやつ書ききりました!ビビって逃げ出したわりに、いざ書き始めたらノリノリでした。ちょう楽しかった。
 そんなこんなで、折りたたみは前回の続き、というかシリーズ?っぽい最遊記です。「エロじゃないけどエロい三蔵」を目標に頑張りました。こんなの他に書く機会もなかったですし、これからもなさそうな内容になってます。あんまり使わないだろうなあっていう言葉をたくさん使った気がします。おかげでそういう言葉のストックがなさすぎて使い回し感がヒドイですが、楽しんでいただければ幸いです。

 「何だお前、一応こんなのも書けたのか」って言われるかなあ、言われたいなあ(笑)

○拍手レス○
3月16日 3:13
拍手ありがとうございました!伝えたかったおっさんのかわいさの一端が、少しでも伝わったようでとてもうれしいです。器用貧乏なおっさんを、これからも丁寧に綴っていければと思っています。のろのろ更新で申し訳ありませんが、お付き合いくだされば幸いです。 //

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最遊記現代パロ、みたいな

 最遊記現代パロ?みたいの、「つづくよ!」とは書きましたがこんな長くなるとは思いませんでした。見切り発車にもほどがある。職場への通勤中やトイレ、昼休みなどちょこちょこした時間を見つけてはスマホに記録してみたらこんなことになり、一番びっくりしているのは私だったりしますし、誰が待ってるとも思いがたいですが、書いちゃったんで放出します。さらにこの続編みたいのも未送信メールとして書き始めてたりしてもう私何がしたいのやら…。いやもう最遊記熱が冷めやらない。我慢できなくて外伝OVA全三巻買っちゃったっていうね、どーせ密林に頼むならっつって中古品ではありますが画集も二冊買っちゃって、最遊人(ガイドブックみたいなのらしい)も買っちゃうっていうね、だからこの春にはヴィータたんとP4Gとペルソナミュージックライブで金使うってのにほんと何やってんだ最遊記リロードをそろえ始めたほんの2週間ぐらいの間に、余裕で二万は飛びました。三蔵が好き過ぎてガンダムWエンドレスワルツも見直しちゃうしね(さすがにレンタル)、我ながらほんと節操がない。もちろんデュオが好きです。あとゼクス。
 でも今週はTOV連載に関していろいろ嬉しい出来事があったので、そっちも意識しています。トロイメライは私にとって異色のものになりそうなので、これからがしんどいところなのですが。きちんと構想組みあげて、緻密に書いていければなあと。ずっと考えてきたことについて私自身ちょっと自信が持てなかったんですが、最遊記外伝を読んで、やっぱりこれでいいかな、こういうのもありかな、と思えたので。わたしにうまく表現できるかはわかりませんが。

○拍手レス○
未央さんへ
はじめまして、拍手コメントありがとうございます。拙宅のTOV連載について、あたたかなご感想と応援の言葉をいただき、本当にうれしかったです。自分でも書いていてもどかしくなるところが多々あるトロイメライですが、「失くしたものを取り戻すレイヴンの物語」という位置づけでこの先も綴っていければと思っています。一緒に見守っていただければ、幸いです。
それからリンクに関してですが、もちろん問題ありません、ありがとうございます!おっさん語りできる方と知りあえるのは願ってもない機会です、広げましょうおっさんスキーの輪!
//

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プロトタイプ最遊記

空前の最遊記ブーム到来により三蔵短編。三蔵たちが人気のドラマ「最遊記」で三蔵一行を演じている、という現代パラレル設定で、ヒロイン(デフォルト名:結月(ゆづき))は三蔵一行の専属カメラマン。役名も本名?も三蔵そのままだったりしますが細かいことは言いっこなしということでおひとつ…。




 数日前、被写体の一人にこう言われた。
「なんかさっ、結月の撮った三蔵はトクベツだよな!」
 よく、意味がわからなかった。
 私は彼らの専属カメラマンという立場にいるから、目の前の彼を含めて、その姿を山のようにフィルムに収めてきた。四人それぞれが整った顔立ちをしているだけに、一人で撮ることだって珍しくない。纏う雰囲気すら違う彼らだから、それを生かそうとすれば構図にだって気をつかう。
 でもそれは四人全員に当てはまることであって、誰か一人にだけ適用される事実ではない。
 大体、わたしだってカメラで生活を立てている人間の端くれだ。このひとには特に力を入れる、このひとなら別にいいや。そんな甘っちょろい考えで仕事をしているわけではない。・・まあ、彼がそういうことを言いたくて、私にこんな話をしてきたわけではないことは、薄々わかっているのだけれど。
「あっ、いや、結月がどーのっていうんじゃなくて!」
 私の表情から察したのか、彼は慌てたように顔の前で両手を振った。なんつーんだろ・・、と難しい顔をしながら言葉を探す。真夏に咲き誇るひまわりのような、大輪の笑顔が似合う彼だが、こういう表情も悪くない。後々の参考にするために、私は心にメモをする。
「・・たぶん、三蔵が違うんだと思う」
 よくわかんねーけど、結月の撮る三蔵は、結月の撮る写真の中にしかいねーんだ。
 
「――とまぁ、こんなことがあったわけですよ」
 眼前に広げられた新聞がばさりと音を立てる。私はなにも、こんな楽屋の一室まで新聞に話をしに来たわけではない。わけではないが、紙をめくる音がやまない様子から察するに、その向こう側の人物はこちらの話を聞くつもりは更々ないらしい。
 私は脱力してローテーブルにべたりとうつ伏せ、記事の一面を見上げた。ああそういえば、今日の天声人語まだ読んでなかったなあ。ひんやりと冷たいテーブルが、頬に心地よい。
「・・・・・・・・・・・・で?」
「うん?」
「それで一体何が言いたいんだ、てめェは」
 前言撤回。意外にちゃんと聞いていてくれたらしい。相変わらず、姿は新聞の向こう側だが。
「・・・・・いや、特に何が言いたいわけでも、」
「はっ倒すぞ」
 表情は見えないが、おそらく額に青筋でも浮かべ、眉間に深いしわを刻んで、ただでさえ鋭い眼光をさらに研ぎ澄ましているに違いない。見えないので怖くはないが、そういう顔はできればカメラの前でだけにしてもらいたいなあと結月は思う。フィルムに収めさえすればたちどころに価値が生まれるのだ、垂れ流しは勿体ない。
「いやあ、悟空の言ってくれたことは素直に嬉しいんですよ」
 同じ被写体を前に、同じ衣装を着せ、同じ構図でシャッターを押したとしても、私にしか捉えられない画がある。しかもその被写体が、ドラマに映画に雑誌のモデルにと引っ張りだこの、たとえ携帯電話に付属されたカメラにさえ一分の隙もなく写る美丈夫――玄奘三蔵なのだとしたら。
 私にとって、それ以上の褒め言葉はないだろう。私が撮ることで、“玄奘三蔵” に何がしかの価値を付与することができるなんて!
「・・でもなんかこう、実感がないというか」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「私の技術が、悟空の評価たらしめてるとは、どうしても思えないんですよ・・」
 曲がりなりにも、この道で食っているのだ。自身の技術がどの程度のもので、それが周囲にどのように評価されているか、推し量れないほど馬鹿じゃない。私はたまたま、一癖も二癖もある彼らと、どういうわけだか波長を合わせることができたから、このポジション――彼らの専属カメラマンというポジションにいられるだけで、特別何かに秀でているわけではないのだ。もちろん、特に劣っている部分があると思うほど自分を卑下してもいないし、それだけの自負もあるけれど。
「・・ハッ、てめェで言ってりゃ世話ねェな」
 鼻で嗤いながら、三蔵が吐き捨てる。同時にばさりと音がして、結月はテーブルの木目をなぞっていた視線をあげた。乱雑に畳んだ新聞を片手に、深い紫暗の瞳がこちらを睥睨している。
「・・・・うるせーですよ・・」
 口の中でもぞりと呟くと、追い立てるような鋭い視線から逃げるように、私は今度こそテーブルにうつ伏せた。額をごりごり押しつけて、鈍い痛みと冷たさに唸る。冷ややかな視線が後頭部に突き刺さり、イメージ的にはすでに頭部のみハリセンボンかヤマアラシな気分だが、今更なのでどうということはない。というか、三蔵に対してうるせーなどと発言し、ハリセンの洗礼を浴びなかっただけ僥倖である。
「――・・教えてやろうか」
「はい?」
「俺が、お前の撮るモンにだけ “特別” に写るワケを」
 ・・よく、意味がわからなかった。
 この言い分だと、三蔵は、私の撮った画に写る自分を、他とは違う――特別なものなのだと、理解しているようではないか。・・・・・・・三蔵が? この、神に愛され、魅入られたとしか思えない容貌をしておきながら、周囲が騒ぎたてるほどには自身のそれに大した感慨も覚えていなければ、頓着もしていないこの男が? 撮った当人たる私が気付かないのに、撮られた側である三蔵が、“特別” に写っている自覚があるとでも?
「・・・・・・・・お前今、ロクでもねェこと考えてただろ」
「そんな滅相もない。普段ロクにチェックもしてないくせに、大口叩くなぁなんて思ってないですよ」
 今度こそハリセンが来るかと身構えるも、目前の彼が動く気配はない。珍しいこともあるものだ、今夜は槍でも降るかもしれない。いつ振り下ろされてもおかしくない衝撃に耐えるべく、わずかに首をすくめて私は顔をあげた。
 そして、思わず息をのむ。
 眩いばかりの金糸の髪、その隙間からのぞく紫暗に湛えられた渇望の色。端正な容貌をゆがめる渋面は、口いっぱいの苦虫を一時に噛み潰したかのようで、眉間に刻まれた皺の深さと言ったらマリアナ海溝もかくやという具合だ。なにかから耐えるように、厚いくちびるがぐっと引き結ばれている。
 そーゆー顔は、レンズの向こう側でしてほしいんですけど。
 その一言がどうしてだか口にできず、私は金魚のようにぱくぱくと口をわななかせただけだった。苦し紛れに名前を呼んでようやく、視線が外される。
「・・三蔵、あの、どうしたんですか。トイレなら我慢しないで行ってきてくださ」
「――――・・てるからだ」
「はい?」
「俺がお前に惚れてるからだ、っつったんだ」

つづくよ!

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「僕の彼女を紹介します」


1:
高校二年の夏、生まれて初めての彼女ができた。
去年同じクラスだった女の子、神崎しおり。ちなみに今は別のクラス。好きな教科は英語で、嫌いなのは数学。部活はソフトテニス。クラスの女子のなかでは、目立つようなタイプでも地味なタイプでもない、普通な感じ。甘いものに目がないが、生クリームよりあんこが好きな、太陽の似合う女の子だ。
一学期の修了式の日、いつものように友達と帰ろうとするしおりを捉まえて、人のいない空っぽの教室で好きだと告げた。その日はまったく嫌になるほどの晴天だった。鎌首をもたげるようにむくむくと大きくなる入道雲。夏の太陽がひどく凶悪なツラをして、教室内で二人、向き合って立ち竦んでいる自分たちを覗きこんでいた。蝉の声がうるさい。校庭から聞こえる野球部の声と、校舎のどこからか聞こえるチューニングの音。
静かだった。まるで世界から、俺としおり以外の人間がパッと蒸発してしまったのかと思うほど、静かで、穏やかだった。しおりはこの教室に入ってからずっと、落ち着きなく右手で左手の親指をなでていて、俺はその白い指をじっと見ている。
不意に、静寂を割って遠くの廊下から近づいてくる足音が聞こえた。
徐々に大きくなるその音に、俺はひどく動揺した。だって考えてもみろ、高校生活はまだあと半分もあるのだ。今ここでフラれたとして、それをどうしてわざわざ他人に周知させる必要がある? だって考えても見ろ、高校生活はまだ半分もあるのだ! これがダメでも、俺はきっと、いや絶対に恋をする。わざわざフラれたなんて情報、垂れ流しにする必要はないはずだ。
「わたし、は」
しおりが口を開いたのは、俺がここから逃げ出そうとするのとほとんど同時だった。
のどから絞り出したかのように紡がれる声が、まるで電流のように体中を駆け巡る。自分より背の高い相手を見上げるとき、わずかに首をかしげるのはしおりの癖で、しおりはその、個人的にグッとくる仕草で俺を見上げた。肩口で切りそろえられたチョコレート色の髪がふわりと揺れる。たべたい、とおもった。
「……わたし、も」
楠野くんが、好きです。
直後、校庭に面した教室の窓を開け放ち、よっしゃああああああっ!と叫んだ俺に罪はない。

その数日後、執り行われたのがしおりとの初デートである。
話題のハリウッド映画を見に行くことは、メールで相談して決めた。そのあとどうするかは決めていなかった。デートのプランニングを任されたというよりは、二人で遊びに行くのに必要な理由というものを、とりあえず見繕ったら満足してしまったという方が正しい。
だってそうだろう、人生初のデートだ。
だから、俺はもちろん映画の内容なんてこれっぽっちも覚えていない。映画の最中は、となりから聞こえるしおりの静かな息づかいが気になってしょうがなかったし、暗闇にまぎれて肩を預けてきたりしたらどうしようとか、手をつなぐチャンスがくるんじゃないかとか、そんなことばかり考えていた。
そしてもちろん、俺の妄想は実現などしなかった。しおりは途中からぐすぐすと鼻をすするほど映画に集中していたから、クライマックスでは背もたれからわずかに背を浮かしてスクリーンに見入っていたし、その両手は膝の上の荷物に終始行儀よく添えられて、とてもじゃないが手を伸ばせるような雰囲気じゃなかった。
神崎、肘掛けはな、肘をつくから、腕を置くからそういう名前がついたんだぞ、きっと。
それすら言えない俺は、下端がわずかにまるく欠けたスクリーンを睨みつける。前列に座ってるやつ、でかすぎんだよちくしょう。
映画を見た後は、興奮冷めやらぬ様子で感想を語るしおりと昼食にし、友達への誕生日プレゼントを見たいのだという彼女に付き合ってショッピングに興じることにした。
昼飯は高校生らしくファストフードだ。俺がチキンフィレオとチーズバーガーを二つ食べ終わる間に、しおりは慎ましやかにてりやきバーガーを一つ食べ終えた。満足そうにアイスティーを飲むしおり然り、クラスの女子たち然り、どうやって彼女たちはあの冗談のような量の弁当で午後を乗り切るのだろう。
しおりは例の、首をわずかに傾げる仕草で俺を見上げて言った。
「だってほら、おやつ食べるから」
にこにこ笑うしおりが、どこからか取り出したポッキーをつまんで差し出す。なんとなく釈然としなくて、周囲にさっと視線を走らせた俺は、そのポッキーにがぶりと噛みついた。夏の熱気で溶けかけたチョコがくちびるの上でぬるりと滑る。しおりはびっくりしたような顔で二、三度まばたきをして、それから照れたように笑った。キスしてェなあ、と喉の渇きを感じるように思った。しおりだから思ったのか、それとも女だから思ったのか、俺には正直よくわからない。思春期の男なんて、そんなもんだ。
そう、思春期の、しかも初彼女で初デートな男が考えることなんて、どいつもこいつもそんなに違っちゃいない。
ロフトでいろんなものをしおりと一緒に見て回りながら、俺はひそかに決意を固めた。
今日いきなり押し倒せる、とは思っていない。……いえ、チャンスがあるなら挑ませていただきますが。全力で。
だから出来ることなら、キスまでは、したい。手をつないで帰ったりなんかして、しおりをちゃんと送り届けて、そして最後にそのくちびるに触れたい。そうしたら、この喉の渇きは癒えるだろうか。きっともっと渇くだろうなあ、と俺はほとんど確信している。
夕暮れの住宅街を、しおりと歩いた。
行き交う人はゼロではないにせよひどくまばらで、軒先から聞こえる話し声やテレビの音をBGMに、俺はしおりと歩く。ぽつりぽつりと会話を交わした。けれどそれもあまり長く続かず、結局二人して黙々と夕焼けの道を歩いた。
俺は基本的に落ち着きのない性分だし、静かにしていられない性質だから、こうして黙り込んでいても息苦しくないというのは、割と貴重な体験だった。もちろん、固めた決意が頭の中をぐるぐるして、この後の段取りを妄想するのに忙しく、無駄口を叩いている余裕がなかったというのもある。俺は残念なことに、二つ以上のことを同時にできるほど器用ではない。
けれど、それだけではないという妙な自信もあった。
深紅のカーテンをはためかせた空の下、少し手を伸ばせば触れられる場所にしおりがいて、同じ速度で歩いていて、俺はしおりを好きだなあと思うことができて、しおりも俺が好きなんだよなあと思うことが許されている。
奇跡のような “今” に、俺も、そしてしおりも、ひどく満足している。そんな確信があった。
だから、そんな奇跡をひとつひとつ積み重ねていく必要があると思うんだ。俺はごくりと唾を飲む。右手の汗を服にこすりつけて拭う。横目でちらりと目標を見定める。白く細い左手。
俺の指がしおりの手の甲をかすめる。
「っ! ごめん! 違うんだ、べ、別に手ェつなぎたいなとかそんなん思ってたわけじゃなくて、」
しおりはわずかに首をかしげて慌てふためく俺を見上げ、笑った。「うん、だよね」

「なあ亮介、どういう意味だと思う?」
「だから知らねぇって言ってんだろ、何度言わせんだお前」
折角の夏休みだというのに、教室は大勢の生徒たちでにぎわっている。夏季補講なんて面倒くさいだけだったが、今年はそう悪くない。そう思っていたはずの俺はしかし、友人の前で重苦しいため息をついている。
机に肘をつきながら至極面倒くさそうにのたまった亮介は、咥えたスナック菓子をじゃこじゃこ噛みつぶして言った。塩気の付いた指先を最後になめるのは亮介の昔からの癖で、俺はその癖が嫌いじゃない。亮介の指は、男の俺から見てもきれいだ。こいつはずるい。
「つってもお前、キスはできたんだろ? ならメデタシメデタシじゃねーか」
「や、それは確かによかったんだけど……気持ちも、よかったんだけど」
「感想まで聞いてねーよバカ」
「なんで手ぇつなぐのはだめだったんだろう……」
興味無さそうな態度で、亮介が答える。「おまえの勘違いとかだろ。あんま気にすんな」
亮介の言葉にうなずきながら、それでも俺は確信している。
しおりは確かに、俺と手をつなぐことを拒絶した。
最初の一回失敗したからといって、そこでめげるような俺ではない。それから何度か挑戦した。最終的にはこちらも最早ただの意地になり、掻っ攫うようにしおりの左手に挑んだが、それでもダメだった。するりするりと水が流れるように俺の右手の猛攻をかわすしおりは、百戦錬磨の志士もかくやという見事な逃げっぷりで、俺はへこむより先に感嘆してしまったほどである。
「おい、楠野」
机に突っ伏し、両腕にため息をしみこませていた俺は、亮介の呼びかけに顔を上げる。奴の視線の先にいるのは、クラスの入り口付近でにこにこ笑うしおりの姿だった。こっちに向かって小さく手なんて振っちゃってまあ、俺のこのだらしなく緩む口元をどうしてくれる。
「わりーな、亮介」
「さっさと行ってこい、バーカ」
亮介の蹴りをふくらはぎに受け、わずかによろつきながらそれでも俺は笑顔でしおりの元へ歩き出す。
細っこい首を少しだけ傾け、一生懸命に俺を見上げるしおりを見ていると、別にいいかという気になってくる。俺はしおりが好きで、しおりも俺が好きなら、それでもう十分なのではないか。……いや、することはしたいけど。
手をつなぐのを拒絶されたからといってなんだ。亮介の言うとおり俺の勘違いなのかもしれないし、手をつなぐ以外にも距離を縮めるやり方はいろいろある。物事をあまり深く考えないのは俺の長所だ。
たくさんの奇跡を積み重ねて、ゆっくり大人になろう。一段一段、いっしょに登ろう。俺がしおりを好きで、しおりも俺が好きな限り。
だから、
「神崎、よかったら今日一緒に帰らねえ?」
「楠野くん、よかったら今日一緒に帰らない?」


僕の彼女を紹介します。
01:手をつなぐのが嫌いです。

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