いつもバトンをせいやっと放り投げさせていただいている水瀬さまから、バトンを受け取らせていただきましたキャッホォオオ! じっくり答えさせていただいたら、なんかものっそい量になりましたえへ、えへへ・・・。よろしければお付き合いくださいまし!
【物書きさんに質問!バトン】
■まずはお名前をどうぞ!
彩斗です、理由もなく 「綾」 という漢字が好きで、それを使おうかとも思ったんですが漢字から受ける印象と私のキャラがあんまりにも一致していないので諦めました。最近は 「あや」 という音にすら卑屈になりつつあります、小粒とかに名前変えようかな←
■初めて小説を書いたのはいつ?
ゆめしょうせつ、というものの存在を知る前、中学のころに最遊記をひたすら文字に起こそうとしてみたり(ヒロインとかそういうのナシで)、ありえんくらいはまったGジェネNEOのシナリオを小説風にしようとしたりしていたのが初めてだと思います・・・・・・あ、穴があったらはいりたいいい・・! ゆめというものの存在を知り、実際やってみちゃったりしてみたのが高二の頃だったような。今ですら二年前にアップしたものとか書き方が違いすぎて見直したら軽い自殺行為だったりするのに、そのころのなんて間違いなく見られたもんじゃないだろうと思います。成長したんだと自己暗示かけて日々を生きています。
■今、どんな話を書いてる?
いい加減もどかしいというか 「お前らさァ、ちょっとさあ・・いやいいけど、別にそれでもいいけどなんていうかさぁ、」 みたいながきんちょ二人のひどくありふれた日常をツラツラ書きつづっています。最近ではふたりの周囲にも視野を広げることをおぼえました。話に厚みが出た、と好意的に解釈することも可能ですが、おかげで40話すぎてもあの状態だよ、と否定的に言い換えることも可能。でもやっぱり最初のころよりは随分しっぽりしてきたふたりのこどもを書くのはとても楽しいです、あの子が攻めだったなんてはじめて知った←
■小説を書くときのこだわりは?
ゆめしょうせつ、というものを扱っているだけに 「らしさ」 を出すことには注意していますが、カラフルなどの現代パロでは特に、「すぐ近くにいそうな」 雰囲気を出そうと思ってがんばっています。ありふれた日常を周囲を見回せばそこにいそうな雰囲気で、でもどこかしら面白おかしく。画面の前で、思わずフッて笑っていただければなぁと思いながら。あとは人様が見てくださっていることを念頭に、いつ誰がどこで何をしているのかをはっきりさせながら文章をかくこと。「・・これ誰の一人称?」 という状態になると足元がふわっふわして、私が落ち着いて読めないのでできる限り注意しながら書いています。
■一番気に入ってる作品のタイトルは?
話の展開とか、流れで一番気に入っているのはカラフル第25話の 「幸せの在るべき形」 です。内容まったくないですからね、夕飯前に心底くだらないこと喋ってるだけですからね。でもああいう本当になんでもない普通の日常を切り取って、ああいうあのふたりらしい形に仕上げられたのは嬉しかったです。あと、カラフル第27話の 「くらがりのひだまり」 の中の最後の表現はよくできたんじゃないかと自己満足しています。目に見える文字から受ける印象も、たしかに話の一部なんだと強く思いました。
■その中身を一部さらしてください。
ばたばたと足をばたつかせるこの阿呆は、そちらが枕元に当たることなどまるで考えていないのだろう。ティエリアは、閉じた文庫本の背表紙で朱音の後頭部を打ち下ろす。コン、と鈍い音がして、同時に彼女はくぐもった悲鳴を漏らした。うつ伏せの状態で布団に顔をうずめているおかげで、幸いにもその声は響かない。
「いってぇ・・・あ、そーだ。ティエリア、注文してた本届いたよ」
ベッドに横になったまま、ぐぐ・・と手を伸ばしてカバンを取ろうと――していないのだろう、この馬鹿は。本当に取ろうとするなら立ち上がるべきで、そうしないのはティエリアが取ってくれるのを待っているからだ。図らずもその意図を読み取ってしまい、不愉快そうに眉をひそめる深紅の前で、朱音の唇はニタァと笑みの形をかたどる。
それだけで数人殺せそうな舌打ちをして立ち上がり、感情を逆撫でする笑みが深くなったのを認めてもう一度、ティエリアは本の背表紙でその脳天を叩きつけた。ゴン、と今度はひどくいい音がして朱音が頭を抱え込む。あまりの痛さに言葉も出ないらしい・・・静かでいい、次からは最初から容赦なく手を下すことにしようと決めて、ティエリアはカバンを朱音に突き出した。受け取ろうと伸ばしてきた手がその間際に拳を握り、勢いよく通り過ぎたのを軽く避ける。この阿呆の考えていることは時々、どこまでも分かりやすい。 (カラフル 第25話 「幸せの在るべき形」)
「子供は寝ていろ」
その言葉にいざなわれるように、思考が夜の底に沈んでいく。どっちのほうが子供だよ、という言葉は朱音の口の中で言葉にならず、むにゃむにゃと宵闇にとけた。心地よいまどろみのなかでとろりと微笑む。――そうだ、明日はカレイの煮付けにしよう。生物の形が残っているから、というわけの分からない理由で焼き魚に手をつけないティエリアが、ギリギリ食べることのできた数少ない魚料理。うん、我ながらなかなかいい考えだ――・・はちみつ色をした、あたたかくてやわらかいまどろみにとけていく。 (カラフル 第27話 「くらがりのひだまり」)
■この人のこの話が好き!
基本的に雑食です、ミステリも好きだし歴史小説も好きだし、広く浅くいろいろ読みますが、みんなが 「おもしろい、これは面白い!」 ともてはやす作品にはなかなか手が伸びません(文学賞受賞作品とかは別)。「どんだけ面白いのか見せてもらおうじゃない!」 という斜に構えた姿勢で本に取り組めばそりゃ期待を裏切られるってもんです・・・だからそういうのは波が去った後、ハードカバーじゃなくて文庫本で読んだりします。
恩田陸さんの 「ネバーランド」 を読んだときには、大学生で読書感想文を書く必要なんてないんだけど書きたくなりました。読んだ後、自分の身に置き換えていろんなことをぐるぐる考えてしまい、文章という形で自分の中から出さないとパンクするんじゃないかと本気で思いました。でもそんな風にぐるぐる考える間も全然苦じゃなくて、だから今でも大好きです。さりげなく、カラフルの中でティエリアに読ませていますえへ。
彼女独特の表現がとても好きで、江國香織さんの作品は結構読み漁っています。日本語の、ひらがなのきれいさを噛み締めながら文字を辿るのがとても好きです。「神様のボート」 は特に私の中に残っていて、やわらかくてあたたかな日常の根幹にある、静かな狂気にどきどきしながら読みました。
■これから書いてみたい話は?
カラフルでは季節に即した話をもっと書きたいです、冬になればこたつとか(あ、私これ絶対書くわ)。あとせっちゃんともっと絡ませたい。
ゆめしょうせつじゃないんですけど、高校生の 「僕」 と、義理の母親である 透子さん と、もうずっと前に死んでしまった 「僕」 の母親である あのひと の三人の話を書きたい。・・なんかこれだけ書くと、それなんてえーぶい?って感じがしなくもないですが、そんなんじゃないです。低い温度で静かな言葉で淡々と、当たり前のありふれた日常を三人の不思議なつながりと一緒にやさしく文章にしてみたい。
■指定されたお題で短文を書いてみましょう。
お題・・・「玉座」
篠崎家の玉座は、いつだってぽっかり空席のまま漂っている。
僕と透子さんと父さんのあいだでふわふわ浮かんでいる王の椅子は、決して僕らに近づこうとしない。けれどそのくせ遠くはない、手を伸ばせば届きそうな場所で玉座はずっと昔から王の帰還を待っている。手に入れようとすることが憚られるような、ある種の荘厳さをまとって玉座はひっそりと僕らのあいだに存在していた。遼介の目から見た王の椅子はただの空席ではなく、だからそれは誰かがずっとずっと長い間座り続けているのとさほど変わらない――誰かが、そう、あのひとが。
あのひとが僕の前に現れるのは、夜が明けるその時だ。明け方、夜と朝が絶妙にまじりあう時間、あのひとはいつだってその日一番美しい空を背後に従えて遼介の前に現れる。雲の切れ間からとどく金色の矢がまばゆいばかりにあのひとを彩り、僕の部屋の中にしぶとく居座る夜の気配を一掃する。僕の頭の中にある、何度とどめを刺してもよみがえるラスボスのようにしぶとい眠気すら吹き飛ばしてしまう。背中まであるゆるゆるとウェーブした髪は光の中で絹のようにかがやき、やわらかそうなワンピースが早朝のすがすがしい風にふわりと揺れる。あのひとの顔は背中から降り注ぐ光のせいで影になり、僕からは見えない。おかげで僕はこの家の中で、あのひとを知らないたったひとりだ。僕は高校生にもなって、僕を生んだ母親の顔を知らない。
「おはよう、透子さん」
「あ、おはよう遼介くん」
僕は、透子さんほどエプロンの似合うひとをしらない。腰の辺りにポケットがふたつ付いているだけの、とてもシンプルな形をした薄いベージュのエプロン。頭の後ろでポニーテールをつくった透子さんと、ベージュのエプロンと、朝日の差し込む明るい台所はイコールだ。透子さんを完全足らしめるにはエプロンと台所が不可欠で、やわらかなはちみつ色に満ちた台所はエプロンをした透子さんが立たないとその色に染まらない。僕は昔から、エプロンをして台所に立つ透子さんの後姿が、完成された空気が好きだった。
僕と透子さんがはじめて会ったのは僕が八歳の誕生日を迎えたその日で、その半年後に父さんと透子さんは結婚した。そのとき父さんは35歳で透子さんは23歳、小学生だった僕にも分かるほどふたりの歳ははなれていて、けれど僕の目から見てもふたりはとても自然だった。お互いはお互いにとって似つかわしく、そうなるべくしてなったという感じがあった。父さんは僕に透子さんを自分のお嫁さんだと紹介するだけで、僕のお母さんになるひとだとは言わなかった。透子さんもそうだった、はじめまして、と言ったあと、透子さんは僕に向かって 「きみが遼介くん。学(まなぶ)さんと涼子さんの息子さん」 とやさしく笑った。学さん、というのは僕の父さんの名前で、涼子さん、というのはあのひとの、僕の本当の母親の名前だ。透子さんはあのひとを知っている。
「遼介くん。今日、学さんが帰ってくる日だっておぼえてる?」
「あー・・・うん、もちろん」
「うそ。単身赴任で頑張ってるのに、遼介くんが忘れちゃってたらかわいそうだな」
僕は透子さんのことを 「おかあさん」 と呼んだことは一度もない。出会ったときからずっと、透子さんは透子さんで、母親はあのひとだった。友人やその母親らに、透子さんを指して 「遼介くんのお母さん」 と言われてもピンとこなかったし、それは今でもそうだ。抵抗感があるとか、そういうある意味でもっともらしい理由は僕にはない。もしも、僕が透子さんのことを 母さん と呼ばないことで透子さんを悲しませているのなら、僕は今すぐにでも呼び方を変えられる。きっと、小学生の僕でもそうしただろう。でも透子さんは、僕が透子さんを母さんと呼ばないことに悲しんでいない。遼介くんのおかあさんは涼子さん、私は何の変哲もないただの透子さん。透子さんの口ぐせだ。
「遼介くん、今日の帰りは? 部活?」
「・・部活の予定は入ってるけど、たぶんなくなる」
どうして?、というように透子さんは台所から振り返る。僕は朝食のトーストをかじり、目玉焼きの半熟の黄身を箸でつつきながら透子さんを見返した。たぶん透子さんは、僕のこたえを知っている。僕と透子さんがこんな話をするのははじめてではないし、それになにより、王の椅子はひっそりと、しかし確かに僕らのあいだに存在しているのだから。今も昔もずっと空席の玉座は、王の帰還をひたすらに待ち続けている。とろりとした黄身がゆるやかに流れ出す、僕は黄色によごれた箸の先端をなめた。
「今日はきっと、雨が降るから」
あのひとが僕の前にあらわれた日には、ぜったい雨が降る。
実家に戻っていたとき、なんか不意に思いついたものを折角の機会なのでここで形にしてみました。予想以上にスラスラ書けて自分に自分でビックリです、もっとしっかり形にしてみたいような気もする。
■次に答えてほしい物書きさんと、お題を指定してください。
最近みんな忙しそうだしなぁ・・・アンカーですいません。もし、よっしゃ私が拾ってやんぜ!という方がおられれば、お題は 「黄昏」 でお願いします!
うわわ、本当に丁寧に答えてくださってありがとうございます‥‥‥!自分でお題を指定しておいてアレですが、まさか『玉座』で素敵現代設定になるとは夢にも思いませんでした‥‥‥。私の貧弱な想像力では、玉座といえば中世やらヨーロッパやら王様やらなので。こうも見事に昇華してくださり、良い意味で予想を裏切られました。えへ、うきうきしながら読ませていただきました!いいですよね、義理の親子関係‥‥‥・(変な意味ではないです)。
最後になりますが、彩斗様が恩田陸ファンだと知り勝手に浮き足立っています。何を隠そう私は大の恩田陸マニアで、作品はすべて網羅しているというラブっぷり。でも結構読書の趣味が同じ方とは巡り会えないので、勝手にシンパシーを感じてしまいました。ネヴァーランド、いいですよね‥‥‥!少年たちの静かな物語がたまりません。ちなみに、私は次点で『チョコレートコスモス』が好きです(自己主張)。
では今回、バトンを拾ってくださり、かつうきうきなお返事をありがとうございました。これからもよろしくお願いします‥‥‥!
いやいや私こそバトンを回してくださってありがとうございました、とてもうきうきしながら解答させていただきました! オリジナルの話を書く機会なんてそうそうないので、こういう場で形にできてとても嬉しかったです。いいですよね、若い義理の母親(おかしな意味ではない、はず)。実は 「玉座」 視点のはなしも考えたんですが、逆にここで現代ものをもってくるのも面白いんじゃないかと考えた結果、こうなりました。水瀬さまの予想を裏切ることができたようで満足です!
私は広く浅く書店で目に留まったものをなんとなくという形が多いので、恩田陸さんの話の魅力に見事なまでに取り込まれつつ、けれどまだ手にとっていない作品も多く、なので教えていただいた 「チョコレートコスモス」 に興味津々ですむふ。素敵な情報ありがとうございました、是非これからもこんな私ではありますがよろしくおねがいします!