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東雲の旅

管理人の徒然日記  ~日常のアレコレから制作裏話まで~

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おくびょうもののうた

 生徒会長さんにもハイレグアーマー装備させてどうにもニヤニヤのとまらない彩斗ですこんにちは。あのひと、クリティカル出たとき最後に蹴りつけるでしょ。あれをね、ハイレグアーマー装備でやってもらうとね、なんかもう踏んでくださいって気分に(自重) 今週17日が卒論発表本番です・・うう、今から緊張で吐き気が・・・。教授やその他諸々のひとたちを前に、大講義室で五分間のプレゼンです。「たった五分?」 って仰られるかたもおられるかもしれませんが、むしろ十分喋れって言われたほうが楽チンっていう。この一年間やってきた実験の様々を、たった五分にまとめて人にわかりやすく伝えなければならない、というのはかーなりツライ・・しかも自分よかずっと知識も経験もある人たちの前で。ただ発表するだけならまだあれですが、その場で二分間の吊るし上げ(質問・討論)タイムが待ち構えているのが気が重たくてなりません。本気で地震来ないかなとか雷落ちないかなとか死なない程度に事故に遭わないかなとかいろいろ考えていますが、この一週間はカップラーメンとカップうどんをお供に日付が変わるまで研究室に居座り、最後の詰めをしてこようと思います。私はそれでもお家に帰りますが、同級生の友人はついに寝袋を持参しました。そんな切羽の詰まりようですえへ!(笑えない)
 さてそんな笑えないほど追い詰められた状態で書き上げたバレンタイン話を折りたたみから。あれだね、人間って追い詰められれば追い詰められるほどなんか違うことやりたくなる生きものだよね!テスト週間時についはじめちゃう部屋の大掃除とか、マンガ全巻一気読みとか。そんなテンションで書きました← お相手、というのが正しいのかは心底不明ですが、カノ猫ヒロインちみっこ時代のジェイドです。うーんと、目を通せばお分かりいただけるかとは思いますが、ちょっと変り種です。・・いや、ちょっとっていうか、長さ的には問題ないからサイトに上げてもいいんだけど思った以上に変り種に仕上がったから向こうにあげるのは様子見たほうがいいんじゃね?と思うくらいには異質です。読み物として、というんじゃなく、ゆめしょーせつサイトにのっけるものとして。そういうところを多少頭に置いた上で、ご一読くだされば幸いです。ちなみにちみっこは デフォルト名:朱音 で統一していますので、苦手な方はご注意ください。

ユキさまへ
>> お返事遅くなってしまってすみません、メールありがとうございます!「正々堂々大脱走」、楽しんでいただけたようでなによりですー。ピオニーにああ聞かれたとき、あのアホの子ならなんて答えるだろうと考え、今回のあっけらかんとした 「ちゅーはしたけど」 と、顔を真っ赤にしながらの 「なっ、何言ってんだよばーかばーか!」(あくまで照れ隠し) のふたつでしばらく迷い、前者を選択しました。どっちかっていうなら、ティエリアで後者が見たいかな、とか考えげふんげふん。ユキさまのコメントにあるようなある種の疑問を呈しつつ、けれど違和感なく受け止めてくださったのかなぁとホッとしているところです。なんも変わらないようで、どこか違うティエリアと主人公を、ジェイドたちを交えつつこれからも書き綴っていければと考えていますので、のそのそ運営ではありますがこの先もお付き合いいただければ幸いです。 //

ノエルさまへ
>> 拍手にコメント、またまたありがとうございますー!ティエリアだけでなく、ジェイドやピオニーのこともご存知の方のご意見は非常に参考になっています。なんせ奴らは存在感が異常なので、その辺のバランスをどうしていくのか、今後現実的な問題として頭を悩ませることになりそうで、今から頭を悩ませています← とりあえずこれからは 「ヒロインが選んだ」 というのをいかにジェイドに認めさせるかに終始しそうではありますが。そのあたりはジェイドよりピオニーのがずっと柔軟に対応してくれそうなので、まずはそっちを陥落させてからにするかとかいろいろ考えている現在ですむふ。ノエルさまの言葉にあるように、ジェイドとしてはひっじょーに 「面白くない」 とは思いますが、彼ならティエリアのとなりでへらへらしているヒロインを優先してくれると信じています。ああなんて親バカ!(笑) 親離れと子離れだったら、意外と親離れのほうが難しそうかもなぁと思いはじめたりもして、まったくもって綱渡り的連載ですがこれからもお付き合いくだされば幸いです。よろしければ折りたたみ記事からのバレンタインデー話にも目を通していただけると嬉しいです!・・いつかジェイドの女関係についても書いてみたいなぁと思いつつ。 //
 


拍手[5回]


 ――いよいよ、今日という日がきてしまった。
 いや、きてしまった、という言い方はおかしいかもしれない。私は心の底から今日という日がくることを恐れていたが、それと同時に今日という日がくることを少なからず待ち望んでいたのだから。昨夜なぞは興奮と緊張のあまりギンギンに目が冴えて、ろくに眠れやしなかった。ベッドに入れば五分と待たずに熟睡できるこの私が、である。初めての経験にごろごろごろごろと寝返りをうち数百匹と羊を数え、やがて空が白んできたころ眠りに落ちた。
 この日が近づくと、空気がピンク色に染まり、風が甘く香る気がするのは私だけだろうか。去年もその前の年もその前の前の年も、世界はふわふわなピンク色に彩られ、肌を裂く冷たい風はしかし甘ったるい芳香を放っていた気がする。とはいえ、それも今年に比べればなんてことはない。今日この日と比べれば、去年の今日など無色透明無味無臭も同然で、なんとも味気ないものだっただろう。なぜか。私はその理由を知っている。原因を知っている。
 あのひとを初めて見たのは三年前、私が大学に入って間もない頃だった。月曜一限目の授業。通勤・通学の乗客らで混みあう電車内。憂鬱になる要素しかない月曜の朝、あのひとの存在だけがなぜかぽっかりと浮かんで見えた。吊革につかまっていたり、座席に腰掛けていたり、姿勢はいろいろだったけれど、あのひとはいつだって前から三両目の車両に乗っていて、いつだって手に本を持っていた。お世辞にも快適とはいえない電車の中で、しかしあのひとはいつだって涼しい顔で、じっと本に目を落としていた。
 所謂ひとめぼれ、ということになるのだろうか。「ああ、このひと、いいな」 と思った一番最初を、私ははっきり憶えていない。眼鏡の奥で伏せられた赤い瞳にだったのか、肩から落ちるはちみつ色の髪にだったのか、落ち着いたその声音だったのか、それともあのひとの纏った涼やかな佇まいに対してだったのか。別の何かかもしれないし、それらすべてかもしれない。とにかく私は月曜一限目の講義へ向かう三両目の電車内で、あのひとの姿を探すようになっていた。
 あのひとは、将来有望な理学部の大学院生。大学内において文学部の私とは何の接点もないあのひとだが、そんな私がほんの少し知りたいと思えば何の不自然もなく知ることができるくらいの、有名人。女の人と連れ立って歩いているのを見かけるのも決して珍しくなどないし、その翌日で違う女の人と昼食をとっている姿を見かけたとしても何の違和感もない。「来るもの拒まず、去るもの追わずならしいよ」 という噂好きな友人の話が、いったいどれだけ役に立つというのだろう。私はただ、月曜の朝、同じ電車内で遠くからあのひとの姿を見かけられれば、それでよかったのだ。
 だから、今日は最後のチャンス。地元での就職が決まっている私がこの街で過ごす最後の二月十四日。来るもの拒まず、と噂されるあのひとは毎年この日、両手にいっぱいの紙袋をぶら下げている――あの中の、たくさんあるうちのひとつでいい。想いがまっすぐに届かなくたって構わない。今日を最後に、私のひとめぼれは思い出になるのだ。

 「―――ッ、」
 大学の近くにある公園のベンチで、私はぼんやり夕焼けを眺めていた。二月の風は子どもたちにもつらいのだろうか、子どもたちの笑い声にさざめいているはずの公園は閑散として、私の溜息が白く凍って流れていく。見上げた空の夕日がひどく眩しくて視線を落とせば、先週買ったばかりのフレアスカートと履きなれないブーツ――傍らには、朝から時間を共にした洒落た小さな紙袋。目のやり場に困ってしまって、どうしようかと首を巡らせたとき、その子は公園のフェンスを軽々と飛び越えて植え込みに消えた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
 ちなみにこの公園、四方を腰くらいまで高さのあるフェンスに囲まれているが、入り口はもちろんある。フェンスをわざわざ飛び越え、そのまま茂みにダイブする理由が私にはどうしたって思い当たらず、言葉をかけることも忘れて呆然と見守ってしまった。しん、と静まった公園。やがて前の道をばたばたと通りかかったのは、両手に自身の身長の半分はあろうかという巨大な水鉄砲 ―ウォーターガン、というのが正しいのだろうか― を抱えた小学生くらいの男の子だった。
「おいッ、かくれてもムダだぜェ。どーせこのへんにいンだロ?」
 何度だっていうが今日は二月十四日、春の気配はまだまだ遠く、吹き荒ぶ寒風が厳しい季節である。その時期に水鉄砲を抱えているだけで十分不釣合いなのだが、それにきちんと水が充填されている様子を悟って私は頬を引きつらせた。その男の子は、庭につながれたままけたたましく吼える犬に向かって水を発射し、逃げ回る犬を見てケタケタ笑っているのだ。あれを悪魔と呼ばずになんと言う。
「・・チッ、ほんとドコ行きやがったンだ朱音のヤツ。見つけたらタダじゃおかねェぞッ!」
 ひどく不穏な言葉を残し、危なげな台詞をばら撒きながら男の子が走り去って数分。おそらく、という私の想像は的中した。再びしん、と静まり返った公園に、ガサガサと茂みを掻き分ける音が響く。
「くっそ、キヨハルのヤツ・・・!」
 植え込みからやがて顔を現した少年は、きょろきょろと辺りを見回し、目を閉じてじっと耳を済ませている。走り去っていた小悪魔のような男の子のことだろうとあたりをつけ、私は控えめに口を開いた。
「さっきの子なら、もうどっか行っちゃったみたいだよ」
「えっ。・・・ほんと?」
「うん。向こうの方に走って行っちゃったから、大丈夫じゃないかな・・・と、それより君のほうこそ怪我はない?」
 ようやく植え込みから脱出した少年は、私の言葉にきょとんとした顔で葉っぱや小枝だらけの自身を見下ろし、恥ずかしそうに頭を掻いた。
「えへへ、オレはこんぐらい全然へーきっ。・・・・あ!」
 なにかに気付いたらしい少年は、葉っぱを払い落としたばかりというのにも頓着せず、先ほどの植え込みの中に体を潜らせてしまった。あの男の子が戻ってきたのだろうか、と私は視線をあたりへめぐらせる。けれど、私の背後に広がっているのは静かな公園だけ。首を傾げる私の前に、やがて少年は植え込みのなかから小さな包みを携えて戻ってきた。ふにゃふにゃと歪んだくちびると、伏し目がちな瞳が彼の落胆を如実に伝える。
「・・もしかしてそれ、バレンタインデーの?」
 植え込みに飛び込んだときの影響だろうか、包み紙はところどころが土で汚れ、小さく裂けている部分まである。無言でこくり、と頷いた少年は、包みをぎゅうと胸に抱きこんだ。
「だれかにもらったの?」
「・・じゃあ、だれかにあげるの?」 こくん、と頷いた少年はぼそぼそと口を開く。「・・いつも、ありがとうって・・・・」
 それきり口を噤んでしまった少年はぎゅうっとくちびるを引き結ぶや否や、包み紙をばりばりと破り捨てた。唖然とする私の目の前で、丁寧に包装された中身を取り出し、乱暴に封を切る。そこに見えたのは、どこか歪な形をしたチョコレートたち――そのいくつかを口の中に放り込んで、少年は私を見上げた。そして、茶色に汚れた口の端をニッと持ち上げる。
「おねーさん、これあげる!」
「でもあけちゃって・・、あげなくて、いいの?」
「うん。ゴローといっしょに作ったんだけど、どーせあんまうまくできなかったし。あ、うまくできなかったんだけど・・・いる?」
 私には、断ることなんてできなかった。
「――・・うん、おいしい」
 ほんと?ならよかった、そう言って笑う少年お手製のチョコレートが口の中でほろほろ溶けていく。あまくて、でもほんの少しにがくて、どこかしょっぱいチョコレート。私が作ったチョコレートはどんな味がするのだろう。あまくて、舌がドロドロに溶けてしまいそうなほどあまくて、でもきっと同じくらいにがいに違いない。ああもしかしたら、ほんのちょっとからいかも。・・そう考えた途端、ツンと鼻の奥が痛くなった。ぎゅうぎゅうと締め付けられたように心臓が痛い。あんまり痛くて、泣きそうだ。
「・・あのね、もしよかったら、私が作ったこのチョコレート・・貰ってくれないかな?」
「え? でも、」
「うん、本当は私もすきなひとにあげようと思ってたんだけど、どうしても勇気が出なくって」
「どうせ今日はもう会えないし、よかったら君が、君のあげたいと思うひとにそれを渡して欲しいの」
「いい、の? ・・おねーさんは、本当に、それでいいの?」 どこまでもまっすぐな視線で見上げられて、思わず息が詰まった。
「―――、うん。・・もう、いいの」
 私のそれより一回りほど小さな手が、おずおずと包みを受け取った。じっと見上げてくる夜のように真っ黒な目は、まるで私の本心を探ろうとしているようで逸らすことができなかった。ここで逸らしたら、あげたばかりのチョコを返されそうな気がした。やっぱりおねーさんが渡したほうがいいよ、なんて言葉と一緒に――けれどそれができないことは誰より私が一番わかっていて、いま私は何よりもこの包みと一緒に家に戻ることを恐れているのだ。
「じゃあ、オレが、オレの大切だって思うひとに、これをわたすよ」
「うん。・・ありがとう、」
「・・へへっ、おっかしーの。お礼言うのはこっちのほうじゃん」
「そうだけど、でも・・・ありがとう」
 神妙な顔でこくりと頷いた少年はやがて私を見上げ、照れくさそうに笑った。――これでいいと思った。これでよかったのだと、私はこのとき、確かにそう思ったのだ。元々自分の気持ちが届くことを、叶うことを目的にこのチョコを作ったわけではなかったのだから。これは私が、私のために作ったもので、あのひとのために作ったものなんかじゃない。だからもし、この子が、自分の大切なひとに気持ちを伝えるためにこのチョコを渡すのだとすれば、それは十二分に昇華されるのだと。
「―――あ、来た!」
 パッと花が咲いたように少年は笑い、私の横を走り抜けていく。もしかして先ほどの男の子が戻ってきたのだろうかと振り返った私は、そのとき、呼吸の仕方を、忘れて、
「ジェイド!」
「すみません朱音、待たせましたか?・・というか貴女はまた、どこを走ればこんなことに・・・」
「あ、えっと・・ちょっとかくれんぼしてて、」
「まったく、そんなことだろうとは思いましたが。・・どこか怪我は?」
 ああ、見間違えるはずがない。込み合う電車の中でも、私の目は確かにあのひとを見つけ出したし、あのひとの声を聴いていたのだから。眼鏡の奥で細められた深紅の瞳、スラリと伸びた長身を屈め、枝葉を取り払う長い指、やわらかな苦笑を浮かべるその白皙。間違えるわけがない。・・間違えるわけがない!
「あれ、ジェイド、チョコは?もらったんだよな、もちろん」
「なんせ重くて邪魔でしたからねー、車の中です。というか、今年も食餌制限つけますから、そのつもりで」
「えぇー、けちっ」
「おや。失礼なことを言うのはこの口ですかー?」
「いひゃいいひゃい!じぇーどそれほんといたいっ」
「ところで朱音、こちらの方は?」
 急に視線を向けられて、心臓が止まるかと思った。だってこれが、初めてなのだ。真正面から彼を見ることも、声をかけられることも。そんなことは決してないのだと、私は本気で。
「んーと、ともだち?」
「・・貴女は本当に守備範囲が広いですねぇ」
「しゅび・・、なに?」
「こちらのことです、気にしないでください」 少年にむかって彼がにっこり笑う。
「朱音がお世話に・・・・・、おや?確か貴女、」
「? ジェイドの知り合い?」
「ええ。朝、車両が同じになることが多いんですよ」
 こんどこそ、しんでしまうかとおもった。私に気付いていたのだという嬉しさよりも、気付かれていたのだという羞恥のほうが勝って声が出ない、息が出来ない。向けられた微笑みに顔から火が出るほどの恥ずかしさが全身を包む。彼はもしかして、私の想いにも気付いているのだろうか――いやそんなまさか、だって、でも。 「あ・・・・、」 今すぐこの場から逃げ出してしまいたくて、私はよろけるように一歩ずり下がる。何か言い訳を・・、いや、どうせこれが最初で最後なのだ。変に思われたって構わない。それよりも今は、一刻も早くここから、
「おねーさん!」
 そのとき、私の手を掴んだのは少年だった。うろうろと方々を彷徨う目を向ける前に、ひょいと背伸びした少年が私に小さく耳打ちする。
「あのな、これがオレの大切だって思うひと。・・だから、見てて」
 向日葵のような笑顔を残して、少年が――少女がパッと踵を返す。小学生の女の子の手には多少不釣合いな、色味の少ない紙袋を彼に突きつけて、照れたように笑う。
「ん、これやる」
「・・私に、ですか?」 どこか困ったような顔をして、彼が私を見た。・・ああ、このひとは、気付いている。
「他のだれにやるんだよ。あ、ピオニーとサフィールには後であげる約束したけど」
「・・・・・・・。まぁいいでしょう、後で泣きつかれても面倒ですし」
「だろ?つかそんなんどーでもいいから。はい、これ!」
「・・・・・・・・・・・」
「いつもありがと、ジェイド」

 誰もいない、ひとりになった公園で、私は泣いた。子どものように、わんわんと声を上げて泣いた。
 そうして泣きながら気付くのだ。私は確かに、あのひとのことが好きだったのだと。単なる憧れでも、目で追う程度の思慕でもなく、確かに私は彼に恋をしていたのだと。
 「ああ、このひと、いいな」 と思った一番最初を、私ははっきり思い出せない。眼鏡の奥で伏せられた赤い瞳にだったのか、肩から落ちるはちみつ色の髪にだったのか、落ち着いたその声音だったのか、それともあのひとの纏った涼やかな佇まいに対してだったのか。別の何かかもしれないし、それらすべてかもしれない。とにかく私は月曜一限目の講義へ向かう三両目の電車内であのひとを好きになって、そして今日、その恋を殺してしまった。他の誰でもない、私が、この手で。
 今日この公園で彼に手渡されるべきは、あの少女が作ったチョコだった。あまくて、でもほんの少しにがくて、どこかしょっぱいチョコレート。私は――、


『臆病者の詩(うた)』
 

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